FIP

がじゅまるの木 その後:アズキの経過

アズキの悲しみ キナコが亡くなってからも、アズキを連れての病院通いは続いていました。 二月に行った猫コロナウィルス抗体検査で、1600というグレーゾーンの数値結果が出てしまったアズキ。 以降発症予防として、キナコと並行して週に一度、猫用インターフェロンの注射を打っていました。 アズキが病院に行くときはキナコも一緒。そして二匹で共に帰宅するのが決まりでした。   キナコが旅立ってから四日後

がじゅまるの木 ~31日の看猫(かんびょう)日記~ 最終回:がじゅまるの木

  キナコが旅立ったのは小雪のちらつく三月初旬。病院でFIPと疑われてからちょうど三十一日目。一歳の誕生日まであと一日という朝でした。 前日は前の晩からの口呼吸がひどくなり、食事もせず小さな体を丸めてハアハアと口で息をし続ける姿があまりにも辛そうで、私も一睡もできずにひと晩中、小さな背中をさすり続けていました。ステロイドの効果か、幸い発作は起こっていませんでした。しかし貧血のせいなのか、

がじゅまるの木 ~31日の看猫(かんびょう)日記~ 第十回:クオリティ・オブ・ライフ

今年は厳冬だとニュースでも繰り返している通り、三月に入ったというのに春先とは思えぬ真冬のような寒さが続いていました。この日も身を切るような北風が吹き、粉雪が舞っていましたが、心中は比較的落ち着いていました。 先週まで絶不調だったキナコの体調が、この数日で改善したのです。昨日などは自分から膝によじ登ってきて喉を鳴らしたのでした。目はほとんど見えていないようでしたが、持ち前の運動神経を駆使して、一メー

がじゅまるの木 ~31日の看猫(かんびょう)日記~ 第九回:光

  初めて耳にする「強制給餌(キョウセイキュウジ)」という言葉は私を戸惑わせました。 「これからやり方を見せますね」 スタッフの女性がアルミ容器に入ったペースト状の猫用フードを奥から持って現れました。 慣れた手つきでプラスチック製のシリンジをぷすりと突き刺すと、筒の部分いっぱいに薄茶色のフードを吸い上げました。彼女はキナコの背後に回り、口の横からシリンジを差し込みフードを少しづつ口の中に

がじゅまるの木 ~31日の看猫(かんびょう)日記~ 第八回:風邪の併発

  ステロイドの効果で食欲が戻ったキナコの右目は改善しました。しかし安堵も束の間、今度は左目の奥に震えが見られるようになったのです。様子が良くなっているように見えても、ウィルスは確実にキナコの中で繁殖していたのでした。 早すぎる異変 二日後、ひときわ寒い2月の日、恐れていた異変は突然起きました。午前中まではパクパクと食事をとり、ふだんより元気に見えていたのに、午後からぱったりと食欲が消え

がじゅまるの木 ~31日の看猫(かんびょう)日記~ 第七回:原因

最も飼い主を苦しめること FIPは未だ不明点が多く、原因すら解明されていません。現段階ではストレスが原因で発症するとされています。どうにか治す術がないかと思い、FIPの治療に注力しているという県内外の様々な病院にも相談の電話をかけました。その度に聞かされた「発症原因はストレス」という説明は、最も私を苦しめました。 11月の時点でもし血液検査の異常に気が付き、避妊手術を断念していたら助かったのだろう

がじゅまるの木 ~31日の看猫(かんびょう)日記~ 第六回:治療のはじまり

  翌日から、キナコは数日おきに、猫用インターフェロン*1(抗ウィルス)とプレドニゾロン*2(ステロイド)という二種類の注射を打つことになりました。 本人の免疫が上がりすぎるとそれに伴ってウィルスも強くなるため、一方では免疫を下げながらバランスを取って症状を緩和させるという何とも歯がゆいものですが、それが現状における治療の限界でした。 アズキの検査結果 キナコの確定診断を受けて、すぐにア

がじゅまるの木 ~31日の看猫(かんびょう)日記~ 第五回:猫の強さ

  FIPの場合、治療法もないという現実と共に帰宅した私は、自らに起きていることが受け止められず、しばらく悄然(しょうぜん)と座り込んでいました。落胆している私をよそに、淡々とケージから出てきたキナコは空腹を満たすと大好きなはずのオモチャに目もくれず、まっすぐカプセル型の猫ベッドに潜り込んでいきました。まるで金輪際、無駄な体力は一切使わないと決めたように。そしてじっと私を見つめました。

がじゅまるの木 ~31日の看猫(かんびょう)日記~ 第四回:FIP

  生まれたときから傍らに猫がいて、野良ちゃんを含めて何匹もの猫と暮らしてきて、それでもFIPという病名を聞くのは初めてでした。今までが運が良かったのか、今起きていることがとても運の悪いことなのか、分かりませんでした。 「FIPはウィルス性疾患です。大変怖い病気です」 「そのFIPにかかっていたら、どうなるんですか?」 質問するのは怖かったのですが、知らないままでいるのはもっと嫌でした。

がじゅまるの木 ~31日の看猫(かんびょう)日記~ 第三回:四か月前の検査結果

  翌日、私は会社を休んで朝一番で昨日の動物病院へ急ぎました。 「ブドウ膜炎を起こしてますね」 院長はキナコの左右の瞼を引き上げて内部の状態までじっくりと診察し、 「今のところ、左目は大丈夫なようです。目はね、すぐに治療したほうがいいですよ。ブドウ膜炎って分かりますか?」 メモ用紙を一枚ちぎると、眼球の断面図を描き始めました。ブドウ膜とは水晶体を覆う虹彩などの膜の総称のことで、キナコは角