ねこラム

がじゅまるの木 その後:アズキの経過


アズキの悲しみ

キナコが亡くなってからも、アズキを連れての病院通いは続いていました。
二月に行った猫コロナウィルス抗体検査で、1600というグレーゾーンの数値結果が出てしまったアズキ。
以降発症予防として、キナコと並行して週に一度、猫用インターフェロンの注射を打っていました。
アズキが病院に行くときはキナコも一緒。そして二匹で共に帰宅するのが決まりでした。

 

キナコが旅立ってから四日後。初めて一匹で病院から帰宅したアズキはしばらくの間、落ち着かない様子で玄関をウロウロし、驚くほど大きな声で鳴きました。それはまるで、

「まだ、キナちゃんが戻ってきてないよ!」

と訴えているようでした。

 

このときアズキが何を考え、どう感じていたのかは分かりません。しかし、アズキは最後までキナコにひたむきな愛情を注いでいました。
特に最後の二日間は、普段は聞き分けのいいアズキが絶対に言うことを聞かず、何度リビングに連れ出してもドアを閉めていても、ジャンプしてドアノブを開けてまで、キナコのいる寝室に戻ってきました。そして傍らに寄り添い、ひたすらになめ続けるのです。
猫同士の愛情の深さ、強さ。もうこのあたりは、人間には立ち入れない領域のようでした。

アズキなりに、大事な友達が突然姿を消してしまったことの違和感、喪失感と懸命に戦っていたのかもしれません。

夕日に思いをはせて

夕日に思いをはせて

経過観察、そして三度目の抗体検査。

三月末の抗体検査でも、数値は前回と同じ1600でした。
数値は依然高めでしたが増加化はなく、幸いにして腹水などの臨床症状もみられず、血液検査の結果も正常値でした。

アズキはこのとき1歳11か月。
念のため、持続感染の可能性を鑑みて、夏ころに再び抗体検査を行うことになりました。
(8週齢以下の場合は移行抗体の可能性もあるので一月後の再検査が推奨されます)

そして七月。三度目の抗体検査の結果、初めて数値が800に減りました。
血液検査の結果も正常値。そして何より、院長や私たちを喜ばせたのが、この3か月でアズキの体重が300グラム増加していたことでした。

「体重が増えているなら大丈夫。FIPを発症して、体重が増えることはないから」

院長のその言葉をもって、アズキは晴れてFIPの予防治療からは卒業となりました。

 

あれから五年。
七歳になったアズキはとても元気に暮らしています。その間、隣には「ちまき」という新しい友達が加わりました。
ちまきはたいへん健康に恵まれた子で、幸い今のところほとんど病院にかかることなく過ごしています。
キナコが二人を守ってくれているのかもしれません。


 

こちらのコラムを執筆させていただくにあたり、キナコの壮絶な治療記録を見返しました。
あれから五年経った今でも、まだ多くの猫さんがFIPと闘い、無垢な小さな命が奪われている現状を目の当たりにし、心の奥がしめつけられるようです。
この五年間ずっと、次のように思い続けていました。今もその思いは変わりません。

「一日でもはやく有効な治療法が見つかり(予防法もしかり)、一匹でも多くの猫さんが助かりますように」

近い将来、FIPが不治の病ではなくなることを願ってやみません。

 

文/こしあんブルー

 

※FIPは研究途上で、まだ不明点が多い病気です。本文は筆者個人の体験談であり、病気の症状や進行には個体差があります。

※本記事は、記者の実体験に基づく記述ですが、それぞれの猫により状況が異なりますので医療行為については必ず獣医にご相談の上、進められますようお願いいたします。(猫報編集部)