ねこラム

がじゅまるの木 ~31日の看猫(かんびょう)日記~ 第六回:治療のはじまり


 

翌日から、キナコは数日おきに、猫用インターフェロン*1(抗ウィルス)とプレドニゾロン*2(ステロイド)という二種類の注射を打つことになりました。

本人の免疫が上がりすぎるとそれに伴ってウィルスも強くなるため、一方では免疫を下げながらバランスを取って症状を緩和させるという何とも歯がゆいものですが、それが現状における治療の限界でした。

アズキの検査結果

キナコの確定診断を受けて、すぐにアズキのFIP抗体価検査と血液性化学検査を行いました。抗体価の結果は1600というグレーゾーン。
「400とか、800とか、せめてそのくらいなら良かったんだけど・・」
院長の顔も晴れません。アズキもコロナウィルスに感染している、しかも数値も高い。子猫のころから食欲旺盛で胃腸も丈夫なアズキならもしかしたら陰性ではという淡い期待は打ち砕かれました。

コロナウィルスがキナコからなのか、キャッテリー*3出身のアズキがもともと保有していたものかは分かりませんが、もしキナコから移ったものだとしたら…。私はアズキやアズキのキャッテリーさんに申し訳ない気持ちでした。

キナコがドライタイプでも、アズキがウェットタイプを発症するという可能性もあります。しかし幸い、目も綺麗でお腹に腹水が溜まっているなどの臨床症状もなかったので、あとは血液検査の結果を待つのみでした。何度もため息をつきながら待合室に座っていると、

「あー、良かった!!」

大きな声が漏れ聞こえてきました。診察室に入ると、初めて見る院長の笑顔がありました。幸運なことに、アズキの血液検査の結果は正常でした。グロブリンと蛋白も基準値内。
ただ抗体価は高かったので、発症を防ぐためにインターフェロンの注射を週一回で行うことになりました。一か月後に数値が下がっていれば、発症の可能性は低いと言われました。

まだまだ甘えたい盛りのアズキ(当時1歳)

まだまだ甘えたい盛りのアズキ(当時1歳)

最もつらかった二匹の隔離

その日から、ウィルスが排出される食事場所とトイレを分けるようにしました。
夜も私はキナコと、アズキは夫と寝るように部屋を別にしました。

毎晩、アズキには寝る前にキナコの体を丹念に舐めてやるという習慣があったからです。それでも、目を離すとすぐにアズキはキナコのそばに寄り添ってグルーミングを始めます。今までは微笑ましいばかりの光景だったのに、私の心中は複雑でした。

キナコが食事をした皿はアズキが舐めないようにすぐに片づけ、キナコのトイレから砂を混ぜる音がしたときは深夜でも飛び起きて駆けつけました。24時間、神経がすり減るようでしたが、疲れ切った私を癒してくれるのもキナコでした。

ふかふかの羽毛布団の上に毛布を敷き、キナコを呼ぶと、どこにいても嬉しそうにやってきてベッドの上に飛び乗りました。
気持ちよさそうに喉を鳴らし、柔らかい毛布を前足で揉んでいます。喉を鳴らすのは嬉しいときの証。喉が鳴れば鳴るほど、機嫌がよくなる。少しでも免疫が高まれば。そう思って私はキナコが眠りにつくまで、少し痩せたその体を撫でてやりました。

母猫と子猫のようにも見えました。

母猫と子猫のようにも見えました。


*1猫用インターフェロン
効能:ウィルス増殖の抑制、免疫増強、抗腫瘍作用
副作用:発熱、だるさなど
*2プレドニゾロン(炎症、免疫、アレルギーなど広い範囲の病気に用いられている)
効能:炎症を鎮める、免疫系を抑える
副作用:本人の免疫も引き下げてしまう、食欲増進、長期にわたって使用すると
本人の免疫機能に影響も)
*3キャッテリー
世界最大の血統登録機関であるTICA(The International Cat Association)、
CFA(The Cat Fanciers’ Association)のいずれかに認可されたブリーダーのこと

 

文/こしあんブルー

※FIPは研究途上で、まだ不明点が多い病気です。本文は筆者個人の体験談であり、病気の症状や進行には個体差があります。

※本記事は、記者の実体験に基づく記述ですが、それぞれの猫により状況が異なりますので医療行為については必ず獣医にご相談の上、進められますようお願いいたします。(猫報編集部)