ねこラム

がじゅまるの木 ~31日の看猫(かんびょう)日記~ 第五回:猫の強さ


 

FIPの場合、治療法もないという現実と共に帰宅した私は、自らに起きていることが受け止められず、しばらく悄然(しょうぜん)と座り込んでいました。落胆している私をよそに、淡々とケージから出てきたキナコは空腹を満たすと大好きなはずのオモチャに目もくれず、まっすぐカプセル型の猫ベッドに潜り込んでいきました。まるで金輪際、無駄な体力は一切使わないと決めたように。そしてじっと私を見つめました。
毅然とした眼差しに私は直感しました。

「この子は病気と闘うつもりなんだ。こんなに小さく華奢な体で・・」

猫には人間ほどの体力はありません。しかし、その内面は本当に強く、気高い生き物です。
飼い主がいつまでも泣いているわけにはいかない。そう思いました。

FIP(猫伝染性腹膜炎)とは

私が個人的に見聞きした病気の特徴は主に以下のとおりです。

  • FIP(猫伝染性腹膜炎は)、コロナウィルスと呼ばれるウィルス感染による感染症。
  • 最初の症例報告は1960年代とされる。歴史が浅いため、未だに有効なワクチンはない。
  • ウィルスを持つ猫のごく一部のうち、コロナが突然変異してFIPを発症。突然変異のメカニズムは未だ解明されておらず、原因の一つとして考えられているのがストレス。
  • 猫エイズや白血病と異なり、FIPにはキャリア期間がない(食欲不振や発熱がつづくなどの症状が確認されたときにはすでに発症している可能性が高い)
  • 発症の第一次ピークは六か月から三歳までの若年齢の猫。発症率は数パーセントと低く、ただし十頭以上の多頭飼をしている場合は、発症率が十パーセントまで上がるとされる。
  • 割合はミックスよりも純血種の方が多くみられる。
  • コロナは感染した猫の排泄物や食器、グルーミングなどで移るとされる。コロナ自体は弱い菌で、猫の半数以上が保有するとも言われている。
  • 発症タイプは二つ。腹水や胸水が溜まるウェットタイプと、目や脳の神経系に異常をきたすドライタイプ。予後はドライタイプの方が悪く、末期には痙攣、麻痺、性格の異常などをきたす。
  • 発症すると、ほとんどの猫は助からない。(ほとんどというのは、病気の第二次のピークは十四歳以上の高齢の猫で、この場合は病気の進行が遅く、何年か生存するケースがある。若年齢では急速に進行し、ほとんど助からない)

そして、確定診断

病院からの電話は予定よりも早い三日後にかかってきました。
FIPウィルス検査の結果は陽性、蛋白分画検査でもFIPに特徴的な波型が確認されたという報告でした。臨床症状も鑑みて、キナコはFIPでも割合が少なく、予後の悪いドライタイプと確定診断されました。
わずかな希望も砕かれました。
しかし、できる限りの治療をしてやろう、助かるためなら何だってしよう。帰宅後のキナコの眼差しを思い出し、私も病気と闘う決意をしました。

 

※FIPは研究途上で、まだ不明点が多い病気です。本文は筆者個人の体験談であり、病気の症状や進行には個体差があります。

 

文/こしあんブルー

 

※ 本記事は、記者の実体験に基づく記述ですが、それぞれの猫により状況が異なりますので医療行為については必ず獣医にご相談の上、進められますようお願いいたします。(猫報編集部)