ねこラム

がじゅまるの木 ~31日の看猫(かんびょう)日記~ 第四回:FIP


 

生まれたときから傍らに猫がいて、野良ちゃんを含めて何匹もの猫と暮らしてきて、それでもFIPという病名を聞くのは初めてでした。今までが運が良かったのか、今起きていることがとても運の悪いことなのか、分かりませんでした。

「FIPはウィルス性疾患です。大変怖い病気です」

「そのFIPにかかっていたら、どうなるんですか?」

質問するのは怖かったのですが、知らないままでいるのはもっと嫌でした。
獣医としてこの難病にかかった猫を何匹も診てきたのでしょう。院長は迷わず断言しました。

「もし、万が一この病気だったら、この子はまず助からないと思います」

 

猫エイズや白血病よりも怖い病気

二の句が継げずにいる私に、院長は口調を緩めました。

「すみません、最初からこんな厳しいことを言って、でも、エイズや白血病の方がまだマシなくらいなんです。他の病院でエイズの末期だと宣告されて治療を見放された猫で、うちにきて8年も生存している子もいます。しかしFIPは若い猫がかかるということもありますが、とにかく進行が早い。獣医として本当に頭の痛い病気なんです。」

いきなり「生存」という言葉が用いられたことに、病気の深刻さがうかがえました。

FIPの確定診断は難しく、今日の生化学検査に加えて、ウィルス検査と蛋白分画(たんぱくぶんかく)検査(けんさ)が行われることになりました。蛋白分画検査というのは、総蛋白のうちどの蛋白が高いかによってFIPかどうかを判断するものです。検査結果は波型の図で表され、正常な猫の血液の場合、アルブミンで大きな山が出来た後は、その後のαグロブリン、ɤグロブリンの結果はなだらかな山になります。

FIPにかかった猫の血液の場合は、グロブリンの値が高いため、結果はラクダの背中のこぶのような二つの山になると言われました。

キナコのこと、そしてアズキのこと

「結果は一週間ほどで出ます。それを待ちましょう。今、大事なのはこれまで通りにふるまうことです。飼い主さんが元気のない顔をしていると、必ずそれは猫に伝わります。辛いとは思いますが、できるだけ明るく接してあげてください」

励ましてくれる院長に、どうしても聞いておく必要がありました。

「最後に一つだけ。仮にこの子がFIPだった場合、この病気は他の猫にも移りますか?うちにはもう一匹、五歳になる猫がいるんです」

「FIPの怖いところはそこです。ウィルスは移ります。この子がFIPだったとしたら、元になっているコロナウィルスという菌はすでにもう一匹の猫に移っています」

目の前が真っ暗になりました。

「今の段階ですぐに隔離が必要ということはありません。発症年齢のピークは一歳から五歳までなので、五歳であれば年齢的にFIP発症の可能性はあります。ただ、繰り返しになりますが、今は結果を待つべきです」

院長は最後まで厳しく、そして冷静でした。

キナコを妹のように可愛がるアズキ

キナコを妹のように可愛がるアズキ

オモチャで仲良く遊ぶ二匹

オモチャで仲良く遊ぶ二匹

 

※FIPは研究途上で、まだ不明点が多い病気です。本文は筆者個人の体験談であり、病気の症状や進行には個体差があります。

文/こしあんブルー

※ 本記事は、記者の実体験に基づく記述ですが、それぞれの猫により状況が異なりますので医療行為については必ず獣医にご相談の上、進められますようお願いいたします。(猫報編集部)