ねこラム

がじゅまるの木 ~31日の看猫(かんびょう)日記~ 第三回:四か月前の検査結果


 

翌日、私は会社を休んで朝一番で昨日の動物病院へ急ぎました。

「ブドウ膜炎を起こしてますね」

院長はキナコの左右の瞼を引き上げて内部の状態までじっくりと診察し、

「今のところ、左目は大丈夫なようです。目はね、すぐに治療したほうがいいですよ。ブドウ膜炎って分かりますか?」

メモ用紙を一枚ちぎると、眼球の断面図を描き始めました。ブドウ膜とは水晶体を覆う虹彩などの膜の総称のことで、キナコは角膜と虹彩の間の前眼房から出血をしており、眼球全体が赤く染まっていたのはそのせいでした。すぐに近隣の眼専門の獣医で眼圧を測ることを勧められました。

この日、私は以前の動物病院で避妊手術の前に行った血液検査の結果を持参していました。

四か月前の血液検査

検査結果を目にした途端、院長の顔がみるみる曇っていきました。

「異常値、出てるじゃないですか」

いくつかの数値の下に赤線を引いていき、

「いいですか?まず、グロブリン、これが正常値1・5~5.7に対して、6・0。そして総蛋白、これも8・4もある。これは、生後7か月の子猫には、あり得ない数値ですよ」

院長が今回指摘した数値については、もちろん前の病院でも確認はしていました。しかし、「参考正常値からそう外れているわけでもないので、問題ない」と獣医から説明されると、それ以上は反論できませんでした。

意味のある検査、意味のない検査

院長はきっぱりと言い放ちました。

「こんな検査は、全く意味がありません。」

「なぜならば、飼い主さんがその意味を理解していないからです」

背中の後ろをスーッと冷たい風が通り抜けたようでした。青ざめていく私をよそに、院長は近くのスタッフ達に、

「この患者さん、すぐにここで生化学検査を行うから準備して」

テキパキと新たな指示を出し、何よりも先に詳細な血液検査が行われることになりました。空のケージを抱えて待つうちに気づけば昼近くになり、あれほど混雑していた待合室は私ひとりになっていました。

通されたのは診察室のさらに奥にある院長の書斎でした。嫌な予感のとおり、待ち構えていた表情は険しいものでした。

「検査結果が出ました。残念なことに、数値はいずれも10月のときよりもさらに上がっています。まずグロブリン、これが7・9と出ました。うちで測れる最大の数値で、実際はこれ以上の可能性があります。総タンパクも12・4。ASTという肝臓の数値も370と異常に高いです。そして目のブドウ膜炎。これらすべてを踏まえた上で、総合的に考えられる疾患として、僕が最も疑っているのは・・・、FIPです」

「エフ・アイ・ピー」という病名を耳にしたのはこのときが初めてでした。

※ FIPは研究途上で、まだ不明点が多い病気です。本文は筆者個人の体験談であり、病気の症状や進行には個体差があります。

文/こしあんブルー

※ 本記事は、記者の実体験に基づく記述ですが、それぞれの猫により状況が異なりますので医療行為については必ず獣医にご相談の上、進められますようお願いいたします。(猫報編集部)